僕にとって、ベートーヴェンの第九は本当に多くの出会いをくれました。
12月25日サントリーホールには、
炎のマエストロ、小林研一郎氏の側に、
多くの素敵な人々が集まっていました。
オーケストラの皆さんも
合唱の皆さんも
事務の方々も
この“第九“を成功させるために
集結し、全集中力を注いでいました。
オーケストラ100人、合唱200人。
総勢300人が1つの楽曲に持てる力を注ぐ。
そこから生まれたエネルギーは凄まじい。
ヴァイオリン一本だと絹の糸のように繊細で、時に時間を切り裂くような強烈な刃のような音を響かせますが、
20人のヴァイオリンが同時に鳴ると、穏やかな波のようであり、
時空を歪めると思うくらい重々しい響きにもなる。
各パートの楽器奏者の精鋭が、この瞬間のために、ひとつの表現のために音を鳴らすのです。
マエストロ・小林研一郎氏も命を削るかのように優しく、しかし心に焔をたぎらせてタクトを振ります。
僕は合唱として歌う席にいながら、第3楽章の途中で涙が出た。
音がいろいろな色に染まる。
人々の集中力がひとつにまとまる瞬間だと思った。
第4楽章では、お客さんに聞いたけど、僕はめちゃめちゃ目を見開きながら歌っていたらしい。笑
その自覚もある。笑
この瞬間を、マエストロの表現したいことを一瞬たりとも見逃すまいと思って歌っていた。
気がつけば第4楽章(約25分)が、全体を通して1時間があっという間に過ぎ去った。
“第九は歌い終わったあと、大変な達成感がある“
といろいろな人から聞いていたけど、
そうだとも思う。
しかし終わった瞬間、会場を包む感動はどこかひと事の様でもあり、
同時に、この第九を表現した一員なのだと感じると静かな感動を覚えた。
これが第九を表現するということなのだろうか。
ガイアシンフォニーの撮影のためにサントリーホールで開かれたこの“ベートーヴェン 第九“の時間は、自分にとってそうそう味わうことのない時間だったのは言うまでもない。
多くの経験、出会い、感動をありがとうございました。
2019 12/25 立野裕明