リステリン冬物語

今日、ドラッグストアに買い物に行った。

でっかいリステリンを1つ手に取りレジに向かうと、僕よりずっと若い女性の店員さんがいた。

店員さん「いらっしゃいませ。」

目があってそう言われて、僕は軽く会釈をして、でかいリステリンのボトルを手渡そうとした。

このほんの一瞬のやり取りの中に、直接手渡そうと思う何かしらの心の動きがあったように思う。

(人肌恋しい季節ではあるが、恋が始まる、とか、そう大層なものでは決してない。)

すると女性の店員さんはほんの一瞬だけ動きが止まり、差し出す僕の手を見ている。

「(あれ、受け取らないのかな?

じゃあここに置きますよ、と…。)」

すると、店員さんは何かに合点がいったかの様に、「なるほど!」という感じで動き出した。

あ、受け取るのかな?と思い、僕は下げかけた腕を元に戻しもう一度手渡そうとすると

店員さんは僕の手からボトルを受け取ることなく、バーコードリーダーを手に取って、差し出している僕の所有物になるであろうリステリンに、直接ピピッと押し当てた。

初めての共同作業の完成です。

まったく不意打ちと言わんばかりに、見事リステリンはバーコードを読み取られ、店員さんは金額を口にする。

完全に僕の予期していた工程の1つが省かれた状態で、してやられたリステリンと、えらいものを目の当たりにしたような僕がそこにいた。

笑って良いのか、そうきたか!とか言って良いのか、あ、さっきの店員さんの一瞬の “間”は、「このまま読み取ってくれて良いんだぜ?」的な小粋なナイスガイ的行動に思われたって事かとか、考えながら、僕の口は少しモゴモゴ動いた様に思う。

僕はお金を綺麗にぴったり並べるまでの数秒の間に、不意打ちを食らったリステリンはすっかり袋の中に入れられて僕を待っている。

店員さん「ありがとうございました。」

僕は店員さんの目を見ながらもう一度会釈をしたが、その目は僕の心の一瞬の動きにまったく気がついていないようだった。

そして、彼女は何事もなく次のお客さんをさばき始めた。

リステリンを買いに行ったほんの数分の間に、店員さんと僕とリステリンの物語は不意に始まり、店員さんは舞台から去った。

僕はリステリンのでっかいボトルを使い切るまでの朝晩、この事を思い出すだろうか、

いやすぐにでも忘れる気がする。

だからここに書いた。

でも新たなリステリンを買う時、僕はまた思い出すだろう。

そして次は、意図的に

小粋なジェントルマン「はい、お嬢さん。このままバーコードを読み取ってくれていいんですよ?」

って顔をしてリステリンを差し出してみようと思うんだ。

そんな事を、家に帰り、コンビニで買ってきたおでんを食べた後の僕はブログに書いている。

生きるの楽しいなぁ。

 

※写真は、リステリンさん