たわしを買ってきて

世の中にコロナが蔓延して以降、実家に買い物袋を届けに行く習慣が出来て、僕もストレス発散、運動不足解消の助けになっています。

そんなある日、電話で母に今日何か買っていくものある?と尋ねると、僕のこれまでの数度の買い物の実績からか、今日は内容は任せるとのこと。

母と僕との間で、だいぶ連携が取れてきたなと思い電話を切ろうとすると、母が一言付け加えた。

「あ、ひとつお願いしても良いかしら。

たわしを買ってきてくれる?」

たわしね、お安い御用だと思って聞いていたが、母の口ぶりからどうもたわしが急遽使えなくなった状態らしい。

半分笑っているような困っているような声だった。

たわしが急遽使えなくなる状況とはどのようなものだろう。

たわしの留め具のようなものが外れて見事にバラバラになってしまったとか、長年使い込んだたわしが、最後のひとこすりで遂にその役目を果たして一切の鍋の焦げ付きを落せなくなった、とかそんな状態だろうか。

とにかく日頃の買い物の他に、たわしを一個買って帰ることが僕のこの日のミッションとなった。

一通り買い物を済ませ、忘れずにたわしを買い物カゴの一番上へ。

この日は比較的軽めの荷物で済んだけど、外はここのところとても暑い。

汗がじんわり滲むけど実家に向かう坂道を吹き抜ける風がとても気持ち良かった。

実家に荷物を無事届け、この日のミッションのたわしを差し出すと母が電話の時のように半分笑って、とても微笑ましいというように台所からあるものを持ってきた。

そのあるものとは、まさにたわしだ。

実家の洗い物や掃除など、数々の時間を共にしてきた年季の入ったたわし。

しかしそのたわしからは、本来そこにあるとは到底思えないものが顔を覗かせていた。

 

 

これは、、、

使えないよね。笑

実家に新しいペット?お友達?が増えてホッコリする平日の午後だった。