遅くなってしまいましたが、先日9月17日は八王子北澤珈琲店でライヴでした。
台風の中、お足元の大変悪い中お越しいただいた皆さん、本当にありがとうございました!
足を運んで頂くにも、ライヴをするにも逆境と言える環境だからこそ、お越しいただいた方への感謝を改めて感じました。
そういった状況も大いに手伝って、会場の雰囲気は大変一致団結したものになりましたね。笑
まずはやはり雨の日ライヴは、恒例Somewhere over the rainbowからの太陽がいっぱいをお送りしました。いつもこれでライヴが終わる頃には小雨または雨があがっております。
(実際は、18時にお客様がお帰りになる頃雨脚は強まりました…あれ、おかしいな。)
最近は1ステージ目はカバーを、2ステージ目はオリジナルを中心にお送りしていますが、この日、有難いことに頂いたアンコールではシューマン作曲の『子供の情景』から、トロイメライをお送りしました。
このトロイメライは子供の情景の中の第7曲なのですが、先月、岩手旅行をした際に立ち寄った宮沢賢治記念館で優しい旋律が流れていて、「これなんだっけ?」と気になりました。
そうしたら父が、クラシックじゃないか?と言うので調べてみたらこのトロイメライでした。
この曲は、宮沢賢治の児童文学作品『セロ弾きのゴーシュ』の中で登場します。
ある晩、ナマイキな猫がゴーシュのもとにやってきてトロイメライ弾いて欲しいんですよぉ、とおねだりするくだりがあります。
僕はそのシーンがとっても好きなんです。
このシーンでは生意気な猫が、ゴーシュの畑から勝手にむしったまだ青いトマトを彼の前に転がして「コレ、土産ですぅ。」といったり、「チェロ弾いてみなさい、聴いてあげますから」などと腹の立つ言動でゴーシュをついに怒らせますが、読者は読んでいて本当に生意気な猫だなコイツ!とゴーシュ同様イラつく事はないと思うんです。
宮沢賢治は、実は猫嫌いとも言われていて、この猫は腹の立つ存在の象徴のようにも描かれてはいるんですが、同時に滲み出る宮沢賢治の優しさが、この三毛猫を生意気ながらもどこか愛らしい存在に感じさせます。
このように宮沢賢治の児童文学にはそこかしこに彼の優しく奥深い人柄が滲んでいます。
今になって彼の描いた児童文学を読み返していて、改めて多くの気づき、刺激を頂いています。
その敬意を表したく、この曲トロイメライをライヴの最後に演奏させていただきました。
宮沢賢治と、ゴーシュにトロイメライをおねだりをするも結局聴き逃した小憎い愛すべき三毛猫に捧ぐ。
そして台風の中、わざわざお越しいただいた皆様に感謝を込めて。
安らかな白昼夢のメロディにて、今回の台風真っただ中の北澤珈琲店ライヴを締めくくらせて頂きました。