翌日の朝は遅かった。もはやまったく朝ではなかった。
昨日仕上げに飲んだ世界のビール(というビールの詰め合わせ各種)が予想以上に効いた。
のそのそ起きて、父のお知り合いを駅まで送って、昼食を食べるため、遠野の田舎料理ひっつみを食べさせる伝承園へ車でGO。
ひっつみとは、練った小麦粉をひっちぎって(ひっつみ)茹でて、丼に移し、鶏の出汁の効いたスープをかけて出来上がりの遠野伝承園自慢のあったか郷土料理。
シンプルな味わいで美味いんだなぁ。
これを雪で覆われた遠野極寒の冬に食べようものなら、芯まで冷えきった身体に優しく沁み渡り、ご馳走様の代わりに、有り難うございましたと自然と言ってしまう。
他にも小鉢で漬物や、夏は冷たいお蕎麦などがセットでついてくる。
満足でした。
さて、これからどうしようかと言う話になり、まずは遠野市内を観光することに。
遠野市郊外にある荒川高原に、父が遠野に来ると必ず挨拶に寄るという大樹があるというので、僕も挨拶をしにいくことにした。
車で遠野中心部から40分ほど。山をしばらく上がったところに広がる高原は、岩手県遠野重要文化的景観に選定されているそうです。
この日の荒川高原は霧に包まれていました。
その高原を登りきってちょっと下った一角に、巨木はありました。
木は真ん中から下にかけて大きな穴が空き裂けており、木の内部は完全に空洞となっています。
恐らくその昔、雷か突風がこの木をへし折ったのでしょう。
しかし木が折れ、枝が折れても、根は生き続け、幹の半分からまた新たな成長を続け、枝葉を増やし続けた。
大きく傷ついた幹もキズを覆うように樹皮を内に丸めながら力強い枝をつけた。
そしていつしか、他にはない風格を持った大樹に成長した。
8月の初め頃には、この木いっぱいに咲く花の蜜を集めに、ミツバチが無数に集まるそうです。
生きること を教えられた気がしました。
僕はここに来るのは実は2度目で、1度目は秋にこの大樹をバックに撮影した写真をもとに、ライヴのポスターの製作をした事があります。
2度目は夏ということもあって、枝には葉が生い茂り、生命の営みを感じさせました。
父はこの場所に初めてきた時、しめ縄などなく誰も何も言わなくても、遠野の護り木だと直感したそうです。
それ以来、遠野に帰って来るたびにこの荒川高原の大樹に旅の挨拶に来るのだとか。
僕もまた来ようと誓ったのでした。
さて、だいぶ長い時間いました。
霧はどんどん濃くなるばかり。そろそろ山を降りよう。
高原から降りる山道は舗装はされているものの、視界が5メートルほどにまで霧が出て来ていたので、徐行して細心の注意を払い車を運転しました。(父が。)
道の途中、霞のかかった牧場に放牧された馬のシルエットに、霧で安心して道路に出て来ていた鹿が数頭、天然うさちゃんが猛ダッシュで茂みに逃げ込みました。
父が先日訪れた時はキツネの親子に出くわしたそうです。数年前僕が来た時は道路の脇の茂みに子グマがいて大いにビビりました。笑
今日も遠野の山、そして護り木の傍では、多くの動物達が生活しています。
(河童もいるかもね!?笑)